poem


*読んだ小説に載っていた好きな詩や、私が作った詩の一部、など


風まかせ

柳は今日も、生きている。
風の吹くままなびけば右を、雨の降るまま重さで下を、
子供がちぎれば痛くて揺れて、初秋を待っては空を見る。
緑が好きではあるけれど、空の青さに模様を描く、
枝になるのも悪くない。冬が来るのも、悪くない。

好きな人。私の一番好きな人。
右みて前みてまた左、たいした根っこも生えてない、
なのに一歩は遠すぎて、結局、この身は風任せ。
風に吹かれているものは、色んな形をしていれば、
色んな匂いもしていたり、色んな温度を持っていて、
纏えど纏えど定まらぬ。
だって風ごと消えるでしょ?
いっつも風ごと消えたでしょ?
柳はぽつんと生きている。
『私が、風に、なりたいの。』

'2006.8.28  ありこ



琥珀に揺れる


注がれる、注がれる
ゆっくり上がる気泡の群れと
琥珀色した円柱の、向こうに見える部屋の窓


いつしか帰らぬ時を見て
私の視界は遠くの夜へ


角を生やした馬の背に たてがみは銀の粉けむる
苦さと辛さを知った胸、小さな小さな膨らみは
駆ける蹄に鼓動を乗せる


クッカと響く蹄の音は
哀色(アイイロ)の空に誰偲ぶ
琥珀に揺れる瞳を偲ぶ

'2001.1.14  ariko






6月の花火


星と砂の間に 小さく短く燃えてる
街の息遣いは 届かないこの場所で
波の瀬に向かって 小さく短く燃えてる
広い広い宇宙で 息吹きはこうして踊る

夜空に赤や緑 黄色の炎 潮風になびいてる 光を追って
とても暖かな気持ちになれた その瞬間だけでも心が澄んだ


星と砂の間に 小さく短く燃えてる
4本の手で今 息吹きを吹き込まれてる
波の瀬に向かって 小さく短く燃えてる
はかない命ほど まっすぐ見て感じたい

心の中に空気 吸い込んだみたい 時も現実も忘れていた
痛む傷口にそっとやさしく 包み込んでくそんな気がしたあの日
夜空に赤や緑 黄色の炎 潮風になびいてる 光を追って

'2000.6.8  ariko






道化師は、笑うことを惜しまない
道化師の、白く塗ったその顔に 赤く塗った唇に
青く一粒 目の下に
 

'2000.5.28  ariko






一粒の砂に世界を見  一輪の花に天国を見る

君の掌に無限を  そして一時間に永遠をつかみたまえ


−ブレイク−
(リプレイ/Kグリムウッド)



どっちみち 百年経てば誰もいない 
あなたも私もあの人も

(江国香織)




言葉の槍


きみを説得しようとは思わない
ぼくに必要なのは勝利ではなく
うずまくたばこの煙幕のむこうに
ぼくと同じ一人の戦士の姿を見ること
敵はおろか味方すらさだかでない
この青白く冷たい戦場で
ぼくが求めるのは言葉の弾丸ではなく
言葉の槍
きみの全身の重みがかけられた
その槍がかえってくるなら
その槍がぼくの魂をつらぬくなら
どんな白々しい沈黙にも耐えよう
さめきったコーヒーの泥沼の中で

(魂のいちばんおいしいところ/谷川俊太郎




誓い

雷よ私に どうか落ちてください   目を閉じた呟きは 雷鳴にかき消されてゆく

ホントは逃げ場探してる   すごくすごくつらくて気を抜くと
涙があふれてしまう   苦しさからただ逃げたいだけ

私をうまく騙してね 毒入りリンゴ食べさせて  眠らせて長い間  起こさないでいて

見えないものを信じる力     も一度思い出してみて
思いを殺すこと無理だから      せめて信じ続けたい

誓わせて どうか弱い     自分に負けないこと
全てを無駄にしないことを       誓わせて   神様

 '2000.1.18  ariko





操り言、操り言、くるくる回る

操り言、操り言、くるりと回る

操り言機械の くるくる回り

くるくる、くるくる、くるりんこ

(ダレカガナカニイル・・・/井上夢人)






道化師の涙

舞い上がった風船に 泣きじゃくる影
道化師もその刹那 かげりを映す
螺旋状の階段を 天国へのばして
水玉模様を塗り替える 夢見た少年の影

空に高く高く高く 追い続け
何が欲しくて手に届くのか 分からぬ頃に
さらわれた澄んだ瞳は 夢を見続ける


荒涼とした草原には 不思議な風が吹き
白いテントの共柱 そびえ立つ曇り空
虚ろに響くオカリナの音 曲芸と遠吠え
巡るサーカスの足跡は 遠くのびて消えた

とても寒い寒い寒い 冬の午後
悲しいほどに透き通った 翡翠に映る
恋人達は永遠を 鏡の中で掴んだ

                                                    97.9  ariko




葉桜

さりげない生き方ができなくて 急ぐように足早に 欺くように色変えて

描いてはバクのように夢食べて 見えないもの追いかけて 見逃すこと多すぎて

そう 葉桜が舞う頃になつかしんでた  日常の中で忘れかけた淡い時間のかけらも

根をはらず どこか類を求めてる そんな矛盾の中では ホントのことが希薄で

流されても  失っても 

そう いつかまた 偶然ここで見かけても 危うさはどこか消えてる こうして踏み出せるから

そう 葉桜が舞う頃になつかしんでた  新しい風と水に 新しい伊吹のせて     

歩き出す
                                                    99.4  ariko






なじみ顔


性格なんだか変わったね
そう言うおまえも変わったよ
数年ぶりの再会で
幼なじみが大人に見えて
懐かしさ胸にこみ上げる

もうあの頃は戻らない
そう 感じた瞬間に
寂しくなってうつむいた

夕焼けの下でかくれんぼ
いっしょにとった畑のいちご
レンゲの下から見上げた空も
七夕帰りの人混みで
はぐれて泣いたあの時も
思えば幼い恋心
たのしかったあの頃の
思い出色が心にしみて
戻りたいなとつぶやいた
                                                     92.10 ariko






宝物のように

その瞳は 形見のように
何かを残した
 うろたえてた
胸の声は聴くより感じて
でも そこへは届かない ここにも

いろんなことから逃げたり避けたり
このままじゃ自分を見失いそうで
逃げてる中にも感じて笑って

何かが残ってく・・・

形はないけど とてもきれい  大空に咲く桜草
まるでそれを大事な物のよに   抱えて

           みなも
 流れる涙  その水面には
    何かを映し   つたい落ちる   
   灰になっても  それは永遠に  
  胸の奥の    水晶の中 

いろんな矛盾や敷かれたレールや
神様はどこにいるんだろう
この罪はいったいどんなお咎めで

許されない・・・? 

  偽りの作り物と人に 言われたってかまわない
  はじめから答えのないことは 分かってた

夜明けの霧が朝露になる  涙型した滴
まるでそれを大事な物のよに  抱えて 

その瞳は   形見のように
何かを残した    うろたえてた
  灰になっても   それは永遠に  
胸の奥の     水晶の中 

                                              '99.5.24  ariko

 

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