2005年11〜12月



2005,11,13
川縁から、夕暮れに沈んでゆく街のシルエット、
グラデーションの空を背景に走り過ぎる電車を観ていた。
ずっと終電だった上に、昨日はほぼ徹夜で働いたから、
枠に縁取られる事がなく、言葉も要らない世界に
しばらく浸っていたかった。携帯もアパートに置いてきた。

夕日を浴びて淡い光を放つ飛行機が、
頭上をゆっくり超えてゆく。小さくなって消えてゆく。
あの飛行機は、どこへ向かっているんだろう。
先週、街でバッタリ遭遇した前職の友人は、
今頃もう日本を発ったんだろうか。

川や海や湖が好き。なにより、橋が好き。
地についてるのか宙に浮いてるのか分からない、
あの、不思議なゾクゾク感が、一際想像力を掻きたてる。

スケルトンのエレベータが好き。
海底トンネルの壁が、透明だったらいいのにと思う。
もしも飛行機がスケルトンだったら、行き先など思慮もせず、
何度も何度も乗ってしまうかもしれない。

船の甲板から、スクリュー付近を見つめるのが好き。
ガラス細工の様な水しぶきと、引き裂かれる様々な粒子。

満月の夜にグリーンロードを走るときは、
サイドの窓だけじゃなく、サンルーフを全開にした。
風が疾走感を煽る。羽の生えた狼になった気分だった。

スリリングな誘惑は、抑えがたい魅惑に代わる。
月の引力で心が乱れてしまえばいいと思いながら
冷たい月を慕い見上げる気持ちと、少し似ている。

 

2005,12,24
-宇宙のどこかに居る-
ソロでの演奏を基本にして数年が経つ私。
一人で成立していないと、壊れたとき、
立ち直れない事を知ってしまったから。

いつかまた、ステージを共にするステディな演奏者が、
どこかでできるといいな。懲りないよね。
心のどこかでは、そういう気持ちが未だあったりします。
恋愛とかも、なかなかステディをつかめない。
痛みを知れば知るほど、踏み出せない。
踏み出したら、地面が急に透けて、
真っ逆さまに落ちてしまいそうだ。
二の足を踏んでは、大人なふりをきめこむ。
そして、忘れたと思い込む。時間が全てをさらってゆく。

そんなストイックな面を、自制心とか都合のいい解釈をして、
単なる臆病なのかもしれないのに、ちょっと大人なつもり。
そうやって自己満足してたって、たまには、
体温とか、鼓動とか、ほしくなるくせに。
しんどかった昔の事を沢山思い出して、それに比べれば
今はぜんぜん大丈夫なんだって、自立できない人間になったら
だめだと、依存する事自体を俯瞰して自らを保ててるつもり。

ふらふら、ふらふら、おぼつかない足取りで、
アスファルトをアルコールで揺るがして、
定まることのない時間軸を自分の指先でもてあそぶ。
無茶をして、命を酷使して速めてみたり、
夜の路地裏で立ち止り、ぼーっとネオンや星空を見上げて、
心の秒針を停めてみたり。たぶん、地に、足が、着いてない。
根も生えず宙に浮いてるので、たぶん、パラサイトもできない。

そうそう、このたび、鹿と、猪、初めて食べました。
黒人さんが店員のこじんまりとしたお店で。
まだまだ未熟で、改めて考えてみたら、未経験いっぱい!
濁り酒も、先週、生まれて初めて賞味いたしました。
まだまだだよね、まだまだ人生、これから、、、かな?

 


2005,10,14
リッキー・リー・ジョーンズのコンサートへ行った。
ゆったりした上着を羽織り、リッキーが階段を降りてきて、
はっ と息を飲んだ。

涙が出たり笑顔になったり、私をこんなに沢山の感情で
満たしてくれる、音楽ってすごいなぁって思った。
気持ちが溢れた。言葉にするのは難しい。
時折ベースがチェロの様な役割をし、
リッキーが鈴で安定したリズムをとった。
50歳を過ぎても少女のように無邪気な、奇跡の声。
シニカルな歌詞もその声で昇華されてゆくようだった。
座席がちょうど出演者の通り道だったので、
ステージを終え控室へ向かうリッキーの左手と私の左手が、
5秒くらい、握り合えたノ!あの瞬間、確かにつながった。
あったかくて大きくて、優しい母性に包み込まれた気がした。

行き帰りは、リッキーの昔の恋人の曲を聴いた。
人の恋路ではあるけれど、大好きな二人。
ままならない人生とか運命の悪戯とか、
私の稚拙な経験値で勝手に精一杯想像しては、
甘酸っぱさや苦さが混ざって、胸がいっぱいになった。
アパートへの道々、夜空に白い息が昇っていったけど、
左手はまだリッキーの体温を覚えていて、
消えちゃわないように、ぎゅっと拳にして歩いた。

あの場所には、いつも壁に、
目を伏せて煙草を吸うリッキーのLPがかかってた。
ずうっとあの街に住むと思ってた。気持ちに嘘ついて、
黙って逃げ出すしかなかった私の、大切な思い出たち。
でも、悪くないよ。言うほど都会は冷たくない。
あったかい人達も、沢山いるみたいノ。
もちろん、東海や関西のみんなも、いつまでも、
心の支えであることには変わりないけれどノ。
来年はきっと、いい恋がしたいな。

皆さん、2005年、こんな不精でいい加減で天の邪鬼で、
不健康な事が大好きなどうしようもない私と関わりを
もってくださって、本当にありがとうございました。
好きです。叶うものなら、みんなが幸せになれますように。
来年もよろしくね!


 

過去の徒然の目次へ戻る

目次へ戻る