近所の空き地で雪を掻き集めていた、九つの冬。
雪をまるで城塞のように積み上げていた。
カマクラができると信じていた。
カマクラは、山の真ん中を掘って作るのに。
ひたすら積み上げていた。
夕暮れがきた。
斜め向かいの瓦屋根からは、雪解けの滴。
手袋は、毛糸でできていたから、
びしょびしょに染み入って冷たかった。
指先は悴んで、もう、感覚なんてなかった。
それでも、積み上げていた。
塀になった。
いつしか、塀は、自分の背を越えた。
「有子、夕ご飯。」
様子を見に来た母が目を丸くしながらそう言った。
カマクラはできなかった。
夕闇に、白い塀が佇んでいる様を何度も振り返り、
家路に着いた、九つの冬。
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